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牛尾男子ヘッドコーチが語る 男子日本代表候補6人のポテンシャル

牛尾男子ヘッドコーチが語る 男子日本代表候補6人のポテンシャル

7月26日に開幕するパリ2024オリンピック。ビーチバレーボール競技の男子出場枠は24チーム(出場権は選手ではなく国内オリンピック委員会に割り当てられる)だが、そのうち開催国フランスに与えられる1枠と、2023世界選手権優勝チームに与えられる1枠(チェコ)の2枠は既に決まっており、残り22枠のうち17枠は2023年1月1日~2024年6月9日の期間にペアが残したオリンピックランキング上位17チーム、5枠はコンチネンタルカップ(各大陸予選)の優勝チームに与えられる。

 

日本の男子が出場権を獲得するには、6月21日から中国・寧波市で行われるコンチネンタルカップ優勝を目指すのが現実的だが、そこに挑む日本代表登録メンバーが発表された。その選考理由、そして選ばれた選手たちの特徴を牛尾正和男子ヘッドコーチに伺った。

 

コンチネンタルカップは国際大会で結果を残している選手を選びたい

 

まず、今回選んだ日本代表がコンチネンタルカップの代表になるかはまた別です。日本代表は将来のこと、そして、これからの伸びしろなども含めて選んでいます。極端に言えば、パリ2024オリンピック以降のことも考えています。それに対し、コンチネンタルカップには、そのときに国際大会で結果を残している一番強い選手に出てほしいと思っています。

 

またコンチネンタルカップでは、チームワークも大切になります。というのも国vs.国の戦いで、3試合のうち先に2勝したほうがトーナメントを勝ち上がるという方式のため、AチームとBチームが戦って1勝1敗になった場合、3試合目はAチーム、Bチームそれぞれから1名ずつ選んだCチームで出場することになる可能性もあります。

 

基本的にはそれまでの固定ペアを崩すことはないと思いますが、その時点で調子のよい選手を選んだほうが勝ち上がる可能性が高いと判断したときは、ペアの組み換えを選択することもあります。ペアの相性もあると思いますが、どの組み合わせとなってもしっかりと自分の力を発揮してくれて、その上でペアの持ち味も伸ばしてくれる選手であることが求められます。そういう意味では、過去にコンチネンタルカップを経験している選手がチームに入ってくれると、チームワークの重要性を分かっているので、頼もしさがあります。

 

ベテランには国際大会での結果を若手には今後の伸びしろを期待

 

今回、今後の期待も込めて選んだのは、年齢順に古田史郎(36歳)、黒川魁(29歳)、マルキナシム(26歳)、黒川寛輝ディラン(25歳)、福嶋晃介(24歳)、安達龍一(23歳)の6人です。

 

このうち古田は年齢こそ36歳ですが、インドア時代、Vリーグの東レ・アローズやジェイテクトSTINGS、ヴォレアス北海道で活躍していた実力、経験値の高さが魅力です。その上でビーチバレーが盛んなブラジルで試合や合宿をするなど志も高い。ビーチへのポテンシャルはあるはずなので、国際大会で結果を残してくれることを期待しています。

 

黒川(魁)は、高校時代、大学時代と各年代のトップを走ってきた選手で経験豊富なだけあり、最近は全体的に高いレベルでプレーが安定しています。また誰と組んでも結果を出すことができるのも持ち味の一つだと思います。現在29歳とベテランの域に達している点を考えると、将来性というよりも、古田同様、しっかり国際大会で結果を残すことが必要だと思っています。

 

マルキはビーチに転向してきたときから期待されていた選手で、髙橋巧とペアを組んでいたときは持ち前の強打で結果も残すなどポテンシャルの高さを見せていました。ただ、2022年に肩の手術を受けてからは、ボールを強く叩くという持ち味は少し影を潜めてしまった部分があると思います。また、これまではブロッカーでしたが、慶應義塾大学の後輩である安達と組むとレシーバーとしての役割が求められます。その部分は未知数ですが、逆に伸びしろとも言えるので、今後の練習や実戦経験でレシーバーとして開花してほしいと思っています。

 

黒川(寛)は、左利きでサーブやスパイクにキレがあり、得点能力が高いことが最大の魅力です。ブロックはまだ課題がありますが、競技に対する姿勢が真面目で『頑張ろう』という雰囲気を出してプレーするので、それが周囲にも良い影響を与えています。若いけれど、背中を見せて引っ張っていくタイプですね。

 

福嶋は今後、黒川(寛)と組むことになりますが、そうするとこれまでのブロッカーからレシーバーに転向することに。もともとバレーボールIQが高い選手で、状況判断にも優れているので、レシーバーとして世界レベルの選手になれるのではと期待しています。

 

いちばん若い安達は、身長198㎝。高さがあるだけでなく、サーブがいいのでブレイクが狙える点が魅力です。ブロック、スパイクについてはまだまだ課題があり成長してほしいところですが、真面目な性格なので、これからいろいろと経験して自信をつけていけばすごい選手になっていけるはず。本人も、少しずつよくなってきているという手応えを掴んでいると思われるので、これからが楽しみの選手です。

 

国際大会を経験すればするほど貪欲に吸収する力を持っている

 

今回、日本代表に選出された6人に共通するのは、『高いレベルのビーチバレーボールを経験すればするほど、貪欲に吸収して力を付けていく可能性を持っている』ことです。そのため、国際大会のときだけ海外に行くのではなく、合宿も海外で行うなど環境を整えれば先につながると思っています。

 

選手自身も海外でいろいろと経験することが重要と認識していて、試合は1回戦で負けてしまっても、そのまま現地に残ってたくさん練習ゲームを行うなどの積極性を見せてくれています。そうでなければ、自分たちのダメなところにも気づけませんし、身長の高い海外選手を相手にしたときの得点パターンも確立できません。

 

コンチネンタルカップでは、中国、インドネシア、イラン、オーストラリア、ニュージーランドなど強い国と戦わなければなりません。中国には身長の高い選手が揃っていて、カタールには身長2m10㎝の選手がいたりします。

 

そうした国とどう戦うのか。日本もAVCの大会にアナリストを派遣して対策を練りますが、そこで得たデータをどう活用するのかもポイントとなります。今の若いメンバーは大学生のときからアナリストからのフィードバックを生かすことに慣れているので、準備万端にしていい状態でコンチネンタルカップに臨めればいいなと思っています。